「貞操権の侵害」どう立証するの?内容証明を送る方法、慰謝料の相場まで

独身だと思って関係を持ち、2年経って配偶者の存在を知らされた。離婚すると言われたのを信じて関係を持ち、相手の子を身ごもってしまった……。
このような状況に直面する人は意外と多いのではないでしょうか。失った時間と労力は取り戻せないにしても、どうにかして相手に復讐したいと思う人も多いはず。
そのケース、もしかすると「貞操権の侵害」に当てはまるかもしれません。上手く行けば300万円相当の慰謝料請求が可能かも……。

本記事では、「貞操権の侵害」とは何かから、慰謝料請求が可能な事例、慰謝料請求方法まで解説しています。

1.そもそも「貞操権の侵害」って何? 

「貞操権の侵害」と言われても、そもそも貞操権って何なの? 何が侵害されるの?と思われる方も多いのではないでしょうか。
まず貞操権とは、性的な関係を結ぶ人物を自分の意思で選択する権利です。
自分の身体を誰に許すのか、また誰に許さないのかを自分で決めることができる権利で、民法710条を根拠としています。民法710条には

“他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。”

とありますが、この中で貞操権は特に「身体、自由若しくは名誉を侵害した場合」の領域に該当します。「○○することができる権利」として細かく明文化されているわけではありませんが、大まかに

  • 性的な関係を結ぶ人物を自分の意思で選択する権利
  • 誰かと性的関係を結ぶのを強制されない権利

の2点を保障するものだと考えておくといいでしょう。
つまり、「貞操権の侵害」とは、誰と性的関係を結ぶかを自ら選択する権利を侵害された状態、ということになります。

2.「貞操権の侵害」が認められる要件とは

この「貞操権の侵害」としてよく裁判に上がるのが、性的関係を結び交際関係にあった人物が、自分を騙していたケースです。
具体例を出すと、独身だと知らされていて性的関係を結んだ人物が実は既婚者だった、などです。
この場合、性的関係を結ぶ人物を自分の意思で選択したものの、選択基準となる情報が正しくなかったため、正常な選択ができなかったということになり、「貞操権の侵害」として認められます。

上の例のように、偽った情報を与えられた状態での交際を強いられていた場合、「貞操権の侵害」を根拠に慰謝料を請求することができます。
それでは、具体的にどのような要件が満たされていれば、「貞操権の侵害」が認められるのでしょうか。

要件1.既婚者であるのに独身だと嘘をついて性的関係に及んだ場合

すでに配偶者がいるにも関わらず独身だと嘘をつき、相手がその情報を信じて性的関係に及んだ場合、「貞操権の侵害」が認められるケースが多いです(※この時、相手が既婚者であるという情報を容易に知りうる状況だったと判断された場合、逆に不貞行為(不倫)として慰謝料を請求される可能性があります)。

実際に、既婚者であることを隠して申立人に近づいた相手と肉体関係を結び、未婚のまま出産した申立人による慰謝料請求が認められた事例があります。
こちらの事例では、相手が申立人の家族と面会していたことや、彼女として紹介されていたことなど、長期にわたって結婚をほのめかされていたことなどが、請求が認められる大きな理由になったようです。

要件2.離婚するつもりのない既婚者が「離婚する」と嘘をついて、性的関係に及んだ場合

すでに配偶者のいる既婚者であるが、離婚するつもりもないのに相手に「もうすぐ離婚する」などと虚偽の発言を行い、相手がそれを信じたことによって性的関係に至った場合も、「貞操権の侵害」が認められることが多いです。

相手が既婚者であることに承知した上で性的関係を結び、相手の子を出産した女性が相手に慰謝料を請求し、認められた事例も存在します。
本件について裁判所は、相手と共同して不貞行為を働いたということで申立人にも違法性があるとしながらも、相手側が事実を偽って申立人に離婚すると伝えていたことなどから、相手側の違法性が申立人の違法性に比べて高いとし、慰謝料の請求を認めています。

上記の2点に共通することは、相手から伝えられていた情報と自分が理解していた情報が異なることです。
「貞操権の侵害」が認められるためには、相手から与えられていた情報と、実際の情報との違いをしっかりと証明することが鍵となりそうです。

3.貞操権の侵害が認められないケース

上述した例のように、相手から伝えられていた情報と自分が理解していた情報が異なった場合「貞操権の侵害」が適用されると書きましたが、状況によっては「貞操権の侵害」が認められない場合もあります。「貞操権の侵害」が認められない要件は

  • 相手に騙されていたと認められない時
  • 相手と自分を比較して、違法性の差がないと判断された時

の2つに大別されます。詳しく見ていきましょう。

要件1.相手に騙されていたと認められない時

つまり、相手が既婚者であることを知っていた状態で性的関係を結んでいた場合です。この場合、相手が既婚者であるという状態に合意していたとみなされ、相手に与えられていた情報と自分が理解していた情報の齟齬を提示しにくくなります。
こうなると「貞操権の侵害」として認められることは難しいかもしれません。

相手が既婚者であることを知っていたものの、「離婚する予定がある」という情報を与えられていた場合に関してはどうでしょうか。
この場合、発言の時系列や提示した証拠の正当性、その後の関係性など、様々な面から状態を見て「貞操権の侵害」が認められるかどうかを判断されます。

「貞操権の侵害」として慰謝料請求申し立てをしたものの、請求を棄却された事例も存在します。
この事例は、「申立人が相手側に配偶者がいることを承知で肉体関係を持ち、申立人が相手の子供を出産した」というものですが、本件に関しては、

  • 申立人が相手の妻にバレないように交際を続けていたこと
  • 申立人が相手と交際を始めた時の年齢が十分に高かったこと

などの観点から、合意の上の交際とされ、慰謝料請求の申し立てが棄却されています。

要件2.相手と自分を比較して、違法性に差がないと判断された時

「違法性」という言葉が出てきましたが、これは「情状酌量分を引いた罪の重さ」と言い換えるこができます。
要するに「相手も悪いけど、あなたも悪いですよね」と判断された場合には、慰謝料の申し立てが棄却される場合があるということです。

相手が既婚者であると知っていながら性的関係を結んでいた場合、その行為は「不貞行為(不倫)」となり、違法行為として認定されます。
婚姻関係を結んだ夫婦には貞操義務が設けられており、不貞行為を働いた場合、貞操義務違反となり、訴訟に発展する恐れがあります。

ここで注意すべきなのが、もしも配偶者の一方と第三者が共同して貞操義務違反を行った場合、貞操義務違反をされた側は、配偶者の一方とともに、第三者のことも訴えることができるということです。
つまり、夫が妻以外の女性と不貞行為を行った場合、原則、妻は夫と不倫相手の女性の両方に対して慰謝料を請求できるということです。

このように、不貞行為とはそれ自体に違法性を含んでおり、裁判の過程でそちらに焦点を当てられてしまうと、自分にも違法性があると判断される可能性があります。
すると「貞操権の侵害」による慰謝料請求が棄却される可能性があるということです。
相手が既婚者であることを知りながら性的関係を持ってしまった場合、いかに自分側の違法性を消し、相手の違法性を提示できるかに、慰謝料請求の成否を握る鍵がありそうです。

そのためには、相手がいつどのような発言をしたのか、どのような状態で性的関係に至ったのかなど、細かい証跡を残しておくことが大切になります。
例えば

  • 相手が配偶者と離婚する予定であると知らせる文面(テキストメッセージなど)
  • 自分が不貞や貞操権に関して正常に判断できる状態でなかった証跡(年齢、精神正常性、脅迫の有無 等)

4.貞操権の侵害で慰謝料を請求するなら? 慰謝料請求にかかる費用、時間は?

ここまで、「貞操権の侵害」が認められやすい条件、認められにくい条件に関して記述してきました。ここからは、「貞操権の侵害」を要件として実際に相手に慰謝料を請求する方法に関して記述します。
慰謝料を請求する際、大きく分けて

  • 内容証明郵便の送付
  • 弁護士に依頼

の2つの方法が挙げられます。以下では、慰謝料請求方法2つそれぞれについて解説してゆきます。

(1)内容証明郵便

慰謝料を請求する方法の1つが、内容証明郵便の送付です。内容証明郵便とは、誰が誰宛にどのような内容の郵便を出したかについて、郵便局が公的に証明してくれる郵便です。相手用、自分用、郵便局保管用の3通を作成し、郵便局に依頼して1通を保管してもらいます。
差出日時や内容について、郵便局が証言してくれるので、相手が郵便を受け取っていないなどと虚偽の証言をすることを防ぐことができます。
内容証明郵便に記載すべき事柄は以下の5点です。

  • タイトル(『慰謝料請求書』など)
  • 違法行為の事実(性的関係を結ぶ際に、独身だと偽った、など)
  • 慰謝料を請求するという文言
  • 請求する慰謝料の額、期限、支払い方法
  • 差出人と受取人の住所・氏名

上記の情報の入った文書を3部作成し、内容証明郵便にて送付しましょう。
送付する際には、郵便局から送付してもらうこともできますし、電子内容証明サービスにて送付することも可能です。

この時の注意点として、慰謝料を請求する相手の氏名・住所をきっちりと把握しておくことが挙げられます。
婚活詐欺などでよくある手口の一つとして、氏名・住所などの個人情報が全て偽物であったというものがあります。
相手側の氏名や住所が分からなかった場合、内容証明郵便を送ることはできませんし、その後の交渉を行うことも難しくなります。相手側とコンタクトが取れている間に、簡単な個人情報の照会を行っておきましょう。

また、内容証明郵便を送ったものの、相手からの返信が来ない場合があります。
内容証明郵便自体には法的拘束力がありません。内容証明郵便を送付することによって、相手に慰謝料支払いのプレッシャーをかけることはできますが、郵便自体は無視されても法的措置はありません。
その時には、以下の点を参考にして、自身が送った内容証明郵便が適切な内容であったか否かについて再確認しましょう。

  • 内容証明郵便の記載は事実に基づくものか
  • 請求金額は適正か

内容証明郵便によって慰謝料を請求する時、慰謝料の請求額とその根拠となる事実を記載する必要があります。
この2点が相手にとって納得できるものであって初めて、送付した内容証明郵便に対して相手からアクションが返ってくると考えてよいでしょう。
内容証明郵便に記載する事実に関しては、一方的な視点からの記載に終始せず、相手側から内容を見ても納得できる客観的な事実を記載するよう心掛けましょう。

請求額に関しては、あまりに高額すぎると、金銭的問題によって相手側が支払い意思を表明できなくなってしまうことがあります。
内容証明郵便に記載する慰謝料の額は自由に決定できるので、最初の提示金額を高く設定してしまいがちですが、相場観と違法性に照らし合わせた上で適正金額を提示しましょう。

一度送付した内容証明郵便に返事が来ない場合、請求内容を検証した上で、内容証明郵便を再送付するという手もあります。
以前送った内容証明郵便の内容が適正でないかもしれないと思った場合、内容を再考してみてもいいかもしれません。

(2)弁護士に依頼

内容証明郵便を再送しても相手が応じなかった場合、弁護士に依頼して慰謝料の請求を行いましょう。
個人で直談判を行うという手もありますが、慰謝料を値下げされたり、交渉そのものが上手く行かなかったりなど、リスクも大きいです。
内容証明郵便を相手に無視されてしまった場合には、プロに依頼して慰謝料の請求を行ってもらう方が、結果的に費用対効果が良くなる場合が多いでしょう。

また、弁護士に依頼すると「弁護士照会」を行うことができるので、もし相手の連絡先しか分からないという場合でも相手の個人情報を特定してくれます。
もしも相手が嘘の情報を教えていたという場合でも、弁護士に依頼してみると解決の糸口が見えるかもしれません。
慰謝料請求を依頼した場合、弁護士が取る手段は大きく

  • 直接交渉
  • 慰謝料請求申し立て

の2点です。直接交渉とはいわゆる示談で、慰謝料請求申し立てとは民事訴訟を指します。
一般的には、資金と時間の観点から、慰謝料請求申し立てを行う前に直接交渉を行います。
相手が直接交渉そのものに応じなかった場合や、直接交渉を行ったものの慰謝料の金額に合意が得られなかった場合、慰謝料請求申し立てを行う、といった流れになります。

慰謝料請求申し立てを行った場合、双方ともに裁判の結果に従う法的義務が生じます。
申し立てが認められた場合に相手は慰謝料の支払いを余儀なくされますが、申し立てが棄却された場合、こちらは慰謝料を請求することができません。
 

5.貞操権の侵害で慰謝料はもらえるの? その相場は?

「貞操権の侵害」の要件で相手に慰謝料請求の申し立てを行った場合、請求が通る相場は約100万円~300万円程度とみられます。
この範囲のなかで、いくつかの判断軸に照らし合わせながら、妥当な請求額が決定されます。「違法性」に関して先述しましたが、それ以外にも以下のような判断軸があります。

  • 申立人の年齢
  • 交際期間
  • 妊娠の有無
  • 虚偽の有無
  • 脅迫の有無

ここで注意すべきなのが、上記の判断軸は、相手側だけでなく、こちら側にも当てはまるということです。
特に虚偽や脅迫に関しては、こちら側から行った事実があると、慰謝料請求の申し立てを行う際にも不利になることがあります。
脅迫めいた言い回しなどは、激高した時などにやってしまいがちですが、相手に対して嫌な気持ちが湧いてきた時にも、そのようなことはなるべく避けるよう心掛けましょう。

逆に、相手の言葉の記録などは、裁判を有利に持っていける武器となる可能性があります。
証拠と記録の1つ1つが、慰謝料請求を行った時の金額を決定します。

6.まとめ

いかがでしたか。性的関係を結ぶ人物を自ら決定する権利である「貞操権の侵害」ですが、認められるか否かの鍵は、与えられていた情報と自分が理解していた情報との差分、相手と自分とを比較した時の違法性の高さにありそうです。
事実がどうであれ、実際の交渉はどれだけ確実性の高い証拠を提示できるかによって変わってきます。
相手からのメッセージや会話の一つ一つなど、できるだけ詳細に記録を取り、自身に有利な証跡を集めることを心掛けましょう。

その上で慰謝料を請求する際には、基本的に弁護士に依頼をし、申し立てを行う前に慰謝料請求の決着をつけてもらうのがベターであるようです。
無料相談サービスを行っている事務所も多いので、まずは一度相談してみるのも良いかもしれません。

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